リモートワーク期間が長くなり、好きな音楽を流しながら仕事をすることも多い今日この頃。みなさん、サブスクしてますか?
はじめまして、Tixplusアプリ事業部事業開発グループの冨田です。
昔は仕事中のBGMといえばJ―WAVEなどFMを流すことが多かったのですが、最近のラジオはおしゃべりが多くてついつい聴き入ってしまいかねないので、最近はSpotifyで自分のお気に入りのプレイリストやおすすめステーションを流していることが多いです。
サブスクリプションって本当に便利ですよね。月千円程度でいろんな曲が聴き放題なんですから。
私は昔はレコードやCDを買い漁っていて、アナログレコードは3千枚くらい、CDは8千枚くらい持っていますが、それでも全然間に合わなくて有名な曲やヒット曲でも「持っていない」ので聴きたい時にすぐ聴けない曲が何曲もありました。持っていてもどこにしまったかわからなくなってしまって聴けない事も多く、そもそも好みがレアすぎてレコードもCDも手に入らないこともしばしば。
ところが今は大抵の曲が検索を掛ければすぐに聴くことができます。
知らない曲であっても、Shazamを起動して聞かせればかなりの確率で検索にヒットしてそのままSpotifyで聴くことができます。
本当に便利な世の中になったものです。しみじみ。
一部のアーティストはストリーミングを解禁していませんが、それももうしばらくしたらきっと解禁されるのでは思います。それくらいストリーミングの勢いは凄いと感じます。
私が初めて手にした音楽は45回転のシングルレコードでした。そこからソノシート、LPレコード、カセットテープ、CD、MD、MP3、iPodなどとメディアは目まぐるしく変遷し、ついには購入からサブスクリプションへと所有形態まで変わってしまいました。
こんなに便利でエポックメーキングなサブスクリプションですが、これは音楽ビジネスの最終形なのでしょうか?次の形がどうなるのか私にはまだはっきりとは見えませんが、おそらくまだまだ進化していくのだと思います。
そしてその次の形を見つけるのは、X JAPANのhideが「インターネットや携帯電話で音楽を聴く世の中になる」という言葉から生まれた、我々エムアップグループの使命なのだろうと思います。
そんな訳で、今回は、音楽ビジネスの次の形を見つけるヒントとして、メディアの視点から音楽ビジネスの歴史を振り返ってみたいと思います。
音楽ビジネス=音楽の流通の始まり
15世紀中頃にグーテンベルクが活版印刷を発明する前から、楽譜はいろいろな形で印刷されていましたが、その頃の音楽といえば宗教音楽が多くビジネス色はほぼありません。
音楽ビジネスは、17世紀〜18世紀中頃に、貴族が宮廷で聴いたバロック音楽を自分のお城でも演奏させられるように楽譜が出版さるようになったことから始まりました。18世紀中頃に成立したブライトコプフ&ヘルテル社はベートーヴェンやメンデルスゾーン、モーツァルトなどの楽譜も出版した代表的な音楽出版社で、なんと現在でも営業しています。
作曲家から「曲」を預かって楽譜として出版する。それを貴族や演奏家にレンタルし、その収益から曲の預かり賃を作曲家に還元したのが著作権ビジネスの始まりです。いまの著作権管理会社を本など出していないのに「音楽出版社」というのもここから来ています。それまでは王様や貴族などパトロンが作曲家本人を連れてこなければ聴けなかった数々の曲が、楽譜として流通することでいろいろな場所で演奏して楽しまれるようになり、音楽は一般の市民にもだんだんと広がっていきます。
そう、音楽は最初「音」ではなく、楽譜として流通していたのです。
この頃の代表的な音楽家は、誰もが知っている巨匠ばかり。当時の人からしてみればクラシックではな、今でいうポップスの感覚だったのではないでしょうか。つまりスーパースターの元祖ですね。
ヨーハン・ゼバスティアン・バッハ(1685-1750)
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756-1791)
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770-1827)
蓄音機の時代
さて、楽譜の時代が100年程続きましたが、次の大きなパラダイムシフトが起こります。「レコード」の発明です。
多くの人がレコードの発明というと1877年エジソンが発明した蓄音機を思い浮かべると思いますが、実はエジソンの蝋管式蓄音機(フォノグラフ)は音質が悪く音楽メディアとしての性格はほとんどありませんでした。
音楽メディアとしては、エジソンの十年後1887年にエミール・ベルリナーが発明した水平円盤式の蓄音機(グラモフォン)が元祖といって良いでしょう。彼の水平円盤が今のレコード盤の原型です。ちなみにグラミー賞のグラミーはこのグラモフォンからきています。それくらい音楽ビジネスの発展に貢献したとしてリスペクトされているということですね。
VINYL(ヴァイナル)レコード
グラモフォン以降レコードの品質改良が何度かありましたが、次の大きな変化は、1940年代後半に登場したヴァイナル(ビニール)盤でしょう。1947年には米コロムビアがLPレコードの量産化をはじめました。それまでのレコードは重く割れやすく摩耗もしやすい、扱いにくい貴重品でした。しかし工業科学の進歩により塩化ビニールでレコードが作れるようになると、軽くしなやかで扱いやすく、流通させやすい商品となりました。他の技術進歩も相まって価格が下がり、レコードはお金持ちの嗜好品から、庶民の楽しみになっていったのです。
ちなみに日本でも「蓄音機」は高級品で、宝石と同じくお金持ちが所有するものでした。みなさんの地元の老舗の時計屋さんは宝石も扱っていませんでしたか?あれは、昔の時計は高級な贅沢品であり宝石と同じように扱われていたからです。蓄音機も宝石と同じく贅沢品だったため時計店で売られることが多く、今でも時計店でCDが売られていることが多いのはその名残なのです。
シングルレコードとジュークボックス
LPレコードの登場から暫くして1949年シングルレコードが発売されました。シングルレコードは1曲ごとに扱うことが容易なためジュークボックスに多く使われました。ジュークボックスは酒場や遊技場に置かれ大人気となり、音楽は家の中で聴くものから、遊びながら聞く庶民的な楽しみとなっていきます。
LPを買えない若者や労働者が酒場のジュークボックスから流れるロックンロールに夢中になり、やがて経済的に成長した時に音楽好きの彼らはレコードの優良顧客となり、音楽ビジネスの裾野を広げていったのです。
カセットテープ
1963年にフィリップス発明したがコンパクトカセットの特許を、1965年に無償公開したため多くのメーカーが参入し大人気になりました。以前のオープンリールテープと違い扱いやすく安価なため大量に販売されました。音質も良い為、他人からかりたレコードやラジオを録音する人が多くあらわれ、1980年代イギリスの音楽業界は「 Home Taping Is Killing Music 」というキャンペーンをはった程です。しかしカセットテープにより、音楽がより身近なものになったことは否定できないでしょう。下記で触れるWalkmanと相まってカセットテープは隆盛を極めます。
WALKMAN登場
1979年ご存知ウォークマンの登場です!これがなかったらおそらくiPodもiPhoneも生まれていなかった、というくらいエポックメーキングな製品。発売された当初は、録音できないテープ再生専用機を誰が買うんだよと思いましたが、結果は大ヒット。Walkmanは音楽を持ち歩けることでより生活に密着したものにし、ヘッドフォン専用にしたことでよりパーソナルなものにしました。
音楽ビジネスの面から見れば、日本ではほぼ時を同じくして流行した貸しレコードのコピー問題と表裏一体ではありますが、音楽が若者の共通文化となることに多大な貢献をしたとは間違いないでしょう。
CD生産開始とデジタル化
蓄音機の発明から約100年後、1982年にCDが発売されたことで音楽メディアはアナログからデジタルへと大きな変革を迎えました。
レコードやカセットテープでかなり手軽に楽しめるようになった音楽ですが、高品質で楽しむにはそれなりの環境を整える必要がありました。しかしCDは音をデジタルにしたことで、高音質な音楽をより気軽に扱えるようにしました。ベートーベンの第九を針で傷つける心配もひっくり返す手間もなく全曲聴けて、ビリー・ジョエルをカセットテープにダビングする手間もなくカーステレオでそのままかけられました。
ちなみにCDから10年後1992年に発売されたMiniDiscは、2013年にひっそりと生産を終了します。良い商品だったんですけどね。私は好きでしたよ。
日本において、音楽CDの生産は1998年(平成10年)がピークで、生産金額が8cm・12cmの合計で約5879億円(レコードやカセットテープを含めると約6075億円)、生産枚数は4億5717万枚でした。いわゆる「CDバブル」と言われた時代です。
しかし翌年以降売上は急速に減少します。売上が下がった理由はいろいろ言われていますが、後述するNapsterをはじめとする違法ダウンロードや違法共有、ケータイなど他の娯楽に時間とお金を取られている、といった説が当時は盛んに議論されていました。
ちなみに、日本におけるアナログレコードの最盛期は1970年代末で、シングル、アルバム、それぞれの販売数が1億枚、カセットテープが5千万本で、あわせて約2億5000万枚本です。生産と販売の違いがあり単純には比較できませんが、アナログからデジタルになることで音楽メディア市場は倍近く拡大したのです。
MP3
1990年代後半のMP3の発明に関してはこちらの書籍が非常に詳しく面白く書かれています。興味のある方は読んでみてください。誰が音楽をタダにした? 巨大産業をぶっ潰した男たち
Napsterが登場した1990年代末をピークとして、日本も米国も音楽ソフトの売上が減少に転じます。いろいろな意見はありますが、MP3とインターネットの普及によって違法コピー、違法ダウンロードが広まったことが影響していることは間違いないと思います。
NapsterとiTunes Music Store
1999年に登場し一世を風靡したNapsterは、著作権侵害で提訴され2003年に倒産します。Napsterの後も違法なファイル共有やストリーミング、ダウンロードサービスが乱立し、音楽業界はインターネットを敵視していました。
しかし、Appleのスティーブ・ジョブズは正規の音楽配信が違法ダウンロードに勝つと信じて、メジャーレコード会社を口説き落とし2004年にiTunes Music Storeを開始しました。結果は皆さんも知っての通りです。
ユーザーは無料であることよりも、多少コストが掛かっても、新曲を発売日に聞けたり、プレイリストが充実していることを選んだのです。白いイヤフォンをクールなアイコンにしたアップルのマーケティングも素晴らしい働きをしました。
米国では2011年に音楽ダウンロードの年間売上高が全レコード(録音)音楽売上高の51%を占め、フィジカルな録音メディアによるビジネス規模を凌駕しました。
ストリーミングの隆盛
近年ではSpotifyをはじめとする有料ストリーミングサービスがユーザー数を伸ばしており、国際レコード連盟の発表によると、2017年にはストリーミングの収益がフィジカルメディアの収益を上回りました。AppleでさえもiTunesによる1曲ごとの販売ではなく、ストリーミングのApple Musicに軸足を移しており、この数年で音楽業界はダウンロード販売からストリーミングに急速にシフトしています。
ダウンロード販売は形のある物を買うのではないとはいえ、楽曲を購入して自分の所有物としていました。ところがストリーミングのサブスクリプションは音楽を聴く権利に毎月お金を払っているだけで、購入はしていません。自分のものじゃないんです。
音楽を聴く「行為」自体は変わっていませんが、その所有形態や向き合う姿勢が時代とともに変わっています。これって実はとても大きな変化だと思います。
購入しなくなったことで音楽が軽んじられているという人もいますが、そもそも音楽ってモノではないので、聴いたり体験したりすることに対してお金を払うという形態は、実は音楽に対するプリミティブな対価の形ではないのかと思ったりもします。ストリーミングだけじゃなく、ライブの売上が年々伸びているのも、アーティストに対する根源的なリスペクトの仕方をリスナー側が自然と体現してきているからなのかもしれません。これはGreatful Deadが見直される予感。ちなみに日本のコンサート・ライブの売上高は、すでに2014年に音楽ソフトの生産高を抜いています。
これからの音楽ビジネスとは
さて、これだけ大きな変化、パラダイムシフトが起きている音楽ビジネスですが、これで最終形態ということはありえません。これからもどんどん形を変えて、今の私が考え付いてもいないような音楽ビジネスが生まれることでしょう。はたしてそれはどんな形なのか?そもそも形があるのか?興味は尽きません。
願わくばエムアップグループで次の新しい形を産み出したいと思います。私もその一助となれれば幸いです。
最後に簡単に年表にまとめておきます。試験に出るので覚えておきましょう
1877 蝋管式蓄音機(フォノグラフ) トーマス・エジソン
1887 水平円盤式蓄音機(グラモフォン) エミール・ベルリナー
1940年代後半 VINAL
1947 LPレコード量産化 米コロムビア
1949 シングルレコード ジュークボックス
1963 カセットテープ発表
1979 Walkman発売
1982 CD生産開始
1992 MiniDisc発売
1990年代後半 MP3
1999 Napster
2001 iPod発売
2004 iTunes Music Store開始
2007 iPhone発売
2008 Spotify開設
2011 ダウンロードがフィジカルを超える
2016 Spotifyジャパン設立
2017 ストリーミングがフィジカルを超える
スタッフダイアリー
ストリーミングを聴きながら音楽ビジネスの歴史と未来を考えてみた
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